東京高等裁判所 昭和52年(ネ)2157号 判決
次に、被控訴人は、民法三八八条の法定地上権は専ら競落建物の利用を保護することのみのために法が認めているものであり、建物の競落人は、競落建物以外の建物等の所有を目的とする地上権を取得することはないのであるから、かかる法意に照らすと、土地所有者の承諾なくして法定地上権の目的土地を区画しその一部についての地上権を競落建物以外の建物の所有を目的として譲渡することは無効というべきであるから、小金井商事が本件建物の所有を目的として控訴人らにA土地の法定地上権の一部を譲渡したのは無効である(そもそも競落建物以外の建物である本件建物に法定地上権を附随させること自体不能事というべきである。)旨主張する。
小金井商事が本件建物を控訴人らに譲渡するにあたり、A土地の地上権を共有(準共有)することとして六五、六二〇分の一六、七七五(A土地の面積中本件土地のしめる割合の二分の一に相当する。)宛の持分を控訴人らのそれぞれに譲渡し、控訴人らが右持分取得の登記を了したことは、前記のとおりである。
思うに、民法三八八条による法定地上権は抵当権設定当時、土地と建物とが同一人に帰属していたのが競売によって所有者を異にする際に、法律上当然に生ずるものであり、地上にある建物の存在を全うさせようとすることが考えられているといいうるけれども、同条によりひとたび法定地上権が成立した以上、該法定地上権は建物所有を目的とする地上権であることはもちろんであって、当然にその目的がその成立のときに地上にある建物を所有することのみに限定されるものと解さなければならない理由はない。そして法定地上権も物権であることは任意に設定される地上権と変りはないのであるから、本来譲渡性を有し、地上権者において自由にこれを譲渡し得るものであって、右譲渡が全部譲渡であると持分譲渡であるとを区別する理由はないので、小金井商事が控訴人らにA土地の法定地上権の持分を譲渡することは同商事の自由になし得るところであって、これにつき土地所有者たる被控訴人の承諾がないとしても、これが無効となるものでないことが明らかである。また、本件土地が専ら本件建物の敷地の用に供せられることになったことは上記のとおりであるが、右はA土地の地上権の共有(準共有)者間の協議によって定められた利用の方法、範囲に基づくものと解するのが相当であるから、本件土地が専ら本件建物の敷地に供せられているからといって、右法定地上権の持分譲渡をもって無効ということはできない。
したがって、被控訴人の前記主張は採用するに由ないものである。
(園田 田畑 丹野)